Yuya Kumagaiのオフィシャルなブログ

ギタリストやカメラマンやロマンチストなどなどやってる熊谷勇哉による何気無いブログ。

Dejavu

季節の変わり目というのは誰のものでもないんだよ。

どんなにSNSが発達しても、表に出ているのは春夏秋冬。意外と大雑把な生き物だ。どんなものでもそうだけれど、変化は僕らを待ってはくれない。だけど僕らはその変化を愛おしく、そして儚く感じる。もう同じ景色は二度と訪れやしないのに、どこかで期待してしまう。ああ、あの時と、、、同じではないと分かっていても同じだと言い聞かせる。

 

これで34回目の「あの時と同じ」が更新されました。

添えられたリンクに飛んだらそこにはまさに「あの時と同じ」のものだった。おかしいな、同じわけはないのにな、と首を傾げていると案内人はこう言った。

バックナンバーは揃えてありますので、こちらからご確認ください。

言われるがままにボタンを押すとそこには歴代の「あの時」がずらっと並べられていた。真空パックに保管されたそれらは、開けてしまえば失われそうだったのでそのまま手にとって見ることにした。しかし、物によっては開封しなければはっきり見ることができないくらい曇っていたりして、何となく気になってしまった。情報を見ても所々文字化けしていて正確な情報は得られなかった。

他の「あの時と同じ」はあるのかと尋ねると、

それはあなた次第で我々がご用意できるか決まります。また、バックナンバーをご用意はできますが、復元には時間がかかります。

こんなご時世にそんな雑なことあるのか、仕事しろ仕事しろ、と内心思っていると、先程まで見ていた「あの時と同じ」が増えているではないか。

不思議なことに、どれがどれだかちっとも思い出せないでいる。おそらく先程手にとったものはこれなんだけれども、いまいちこれじゃない気がしてるし、時系列も変わっている気がする。

お気づきかと思いますが、こちらのシステムはあなた自身でその都度バックナンバーが変化しております。ですので、確かめたいことがあったらあなた自身でどうにかして頂くしかないのです。

サービスには含まれていないんですか?

申し訳ございません。サービスという概念はうちでは取り扱っておりませんので。

ちょっと言ってることがあんまり分からないのですが、、、。まあそういうのはやってないってことですね。

なんて酷い接客だ、概念がないとか普通言うか、言い過ぎだと思いながらも、その横でバックナンバーは減ったり増えたりしている。とにかく分かりそうなものを開封してみようと鮮明な「あの時と同じ」を一つ開封した。

 

 

あれからどれくらい時間が経ったのだろうか。

開封した瞬間にまさに「あの時と同じ」匂いと景色、そして記憶が揺さぶられてその場で立ち尽くしていたようだった。

ただ、開封直後から今までの記憶は思い出せない。

如何でしたでしょうか。これがあなたの「あの時と同じ」です。

僕は案内人の言葉をうまく返せず黙ってしまった。何も覚えていないし、最初の一瞬だけだった。ここは何の施設かも分からないけれど、とにかく懐かしくて感傷的でそれでいて愛しい気持ちでいっぱいだった。

すみません、今日はこの辺で帰ります。

なんともふに落ちない気持ちでそのまま施設を出ると、そこは自分の部屋だった。

入ったドアを開けてみてもそこはいつもの玄関で、施設はそこに無かった。

気付けば夕方、外は急に涼しさが増して、赤紫に燃え上がる雲を見つけてふと、あの時と同じだなと夕空に呟くのであった。

 

 

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